ROAD TO FREEDOM / 自由への旅路
その損益はどの箱に入る?先物取引に係る雑所得等と3年の繰越|2026年8月版
この記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の金融商品やサービスの利用を勧誘するものではありません。FXは為替変動とレバレッジにより、預けた証拠金を超える損失が生じるおそれがあります。税制の内容は改正されることがあり、本文は国税庁が令和7年4月1日現在の法令等に基づいて公表している記載を引いたものです。実際の申告内容や適用の可否は個々の事情によって異なります。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
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結論から言うと、一年の取引が終わったあと、その損益は「先物取引に係る雑所得等」という一つの箱に入ります。国税庁のタックスアンサーには、他の所得と区分して申告分離課税で扱うこと、損益通算はこの箱の中でしかできないこと、そして引ききれない損失は一定の要件の下で翌年以後3年内に繰り越せることが書かれています。相場の話はここでいったん終わり、ここからは勘定の話です。草原の民が越冬前に群れを数え、売る分と残す分を仕分けるように、年の終わりには自分の損益をどの箱に入れるかを決めることになります。この記事では、その箱の中身を国税庁の記載どおりに確かめます。
取引が終わったあと、損益はどの箱に入りますか?
「先物取引に係る雑所得等」です。国税庁のタックスアンサーNo.1521には、こう書かれています。
他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税されます(申告分離課税)。
大事なのは他の所得と区分しという書き出しです。給与でも事業でもない、独立した区画が用意されています。区画が独立しているということは、そこに入るものと入らないものの線が引かれているという意味です。その線が、後で損失の話をするときに効いてきます。
なお、この記載は令和7年4月1日現在の法令等に基づくものとして公表されています。税制の記述を読むときは、いつ時点の法令に基づく説明なのかを一緒に控えておくと、後から見直すときに迷いません。
税率は、公式ページに何と書かれていますか?
原文は分解された形で書かれています。所得税が15パーセント、そして括弧の中に他に地方税5パーセント。さらに、注として続くのが次の一文です。
(注)平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則として、その年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することになります。
復興特別所得税は、利益に対して直接かかるのではなく、その年分の基準所得税額に対して2.1パーセントという形で書かれています。かかる先が一段違うのです。ここを飛ばして合計だけを覚えると、なぜその端数が出るのかが分からなくなります。
数字にすると、どれくらいですか(概算・目安)
仮に、この所得だけを取り出して年間の利益が20万円だったとして、原文の分解にそのまま当てはめてみます。所得税は20万円の15パーセントで3万円。地方税は5パーセントで1万円。復興特別所得税は基準所得税額の2.1パーセントなので、3万円の2.1パーセントで630円。合わせて4万630円という計算になります。利益に対する割合に直すと20.315パーセントです。
この4万630円という数字はあくまで概算・目安です。実際の税額は他の所得や各種の控除によって変わりますし、基準所得税額はその年分全体で決まる数字です。自分の申告額を確定させる場面では、所轄の税務署または税理士に確認してください。FXの利益と確定申告の全体像は新たな旅立ちの準備:FXの利益にかかる税金と確定申告の基礎知識でも扱っています。
課税関係は、店頭と取引所で分かれますか?
分かれません。同じページに、次の一文があります。
なお、外国為替証拠金取引(FX)には、店頭デリバティブ取引と市場デリバティブ取引(金融商品取引所の開設する金融商品市場で行われる取引)がありますが、いずれの場合も課税関係は同じです。
ここは、取引所に上場された商品を扱うサービスを使っている人ほど確かめておきたい一文です。たとえばフジトミ証券のシストレセレクト365は、公式に「東京金融取引所に上場するくりっく365を対象とした投資助言サービス」と説明されています。取引の場が取引所であっても、年の終わりに損益が入る箱は同じです。
かかった費用は、いくらと公表されていますか?
損益を仕分ける前に、その年に何を払ったかを控えておく必要があります。まずはサービスそのものの利用料からです。シストレセレクト365の場合、公式の記載はこうです。
シストレセレクト365は、売買手数料 0円、サービス利用料金(初回のみ税込990円)でご利用いただけます。
契約の解除についての記載も、同じページです。この自動売買管理サービスはクーリング・オフの対象になり、クーリング・オフにより契約を解除した場合は支払った助言報酬が全額返金されること、クーリング・オフ期間経過後に解約した場合は事前に支払った助言報酬の返金はないことが明記されています。金額と条件が同じ場所に並んでいるので、控えるならまとめて控えられます。
| 項目 | 公式に書かれている金額 |
|---|---|
| 売買手数料 | 0円 |
| サービス利用料金 | 初回のみ税込990円 |
| 助言報酬 | 990円(税込)初回のみ |
ただし、これはサービスの利用料であって、その年に払う金額の全部ではありません。シストレセレクト365は取引所に上場するくりっく365を対象とした投資助言サービスなので、約定そのものは自分のくりっく365口座で起きます。同じページの下部には、こう書かれています。
・くりっく株365・くりっく365では注文が成立した際に手数料が掛かります。手数料の額はお取引口座の内容や銘柄により異なり、くりっく株365では1枚あたり最大で4,400円(税込)、くりっく365の通常銘柄では1枚あたり最大1,100円(税込)、くりっく365のラージ銘柄では1枚あたり最大で11,000円(税込)です。
1,100円は最大の額で、しかも「お取引口座の内容や銘柄により異なり」という条件が付いています。固定額ではありません。年内に何を払ったかを控えるなら、初回990円の利用料と、約定のたびに発生するこちらの手数料は別々に数えることになります。
損が出た年には、何ができますか?
できることは二つです。国税庁の記載を順に見ます。
他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算は可能ですが、「先物取引に係る雑所得等」以外の所得の金額との損益通算はできません。
しかし、他の「先物取引に係る雑所得等」と損益通算をしてもなお引ききれない損失の金額は、一定の要件の下、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除することができます
一つ目は、同じ箱の中での相殺です。箱の外にある給与などとは相殺できません。冒頭の「他の所得と区分し」が、ここで効いてきます。
二つ目は、時間をまたぐ持ち越しです。同じ年の中で引ききれなかった損失を、翌年以後3年内に持ち越せる。ただし原文には一定の要件の下という限定が付いています。誰でも自動的に、という書き方はされていません。
その要件と手続については、国税庁がタックスアンサーNo.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」で別途案内しています。確定申告書の提出を含む複数の手続が定められているため、要件をここで抜き書きはしません。原典に当たってください。適用の可否は所轄の税務署または税理士に確認するのが確実です。
| 場面 | 国税庁の記載 |
|---|---|
| 同じ区分の中での相殺 | 他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算は可能 |
| 他の所得との相殺 | 「先物取引に係る雑所得等」以外の所得の金額との損益通算はできない |
| 引ききれない損失 | 一定の要件の下、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除することができる |
複数のストラテジーを動かすと、税の上ではどう見えますか?
一本にまとまって見えます。自動売買では稼働させる本数を増やせることが多く、シストレセレクト365もその一つです。公式には次のように書かれています。
シストレセレクト365では、複数のストラテジーを稼働させることが可能です。それにより1つのストラテジーを複数枚稼働させるよりもリスクを分散させる効果も期待できますが、相場の状況によっては、想定以上の損失となる場合もあります。
この一文は、比較の基準が「1つのストラテジーを複数枚稼働させる場合」に置かれている点が要です。何と比べての分散なのかが、原文で固定されているのです。そして、分散の効果が語られたすぐ後に、想定以上の損失となる場合もあるという打ち消しが並んでいます。片方だけを取り出すと、原文より広い意味になってしまうのです。
同じページには、複数のストラテジーを選択して稼働できるため、同じ銘柄の異なるストラテジーを稼働させる場合は両建てになることがあるとも書かれています。加えて、ストラテジーの運用成績にはスワップポイントが加味されていないこと、運用成績は将来の運用成果を保証するものではなく、相場の状況によっては過去の運用成績を大きく下回るおそれがあることも明記されています。
ここから税の話です。稼働の本数をいくつに増やしても、年の終わりに損益が入る箱は一つです。勝った仕掛けと負けた仕掛けを別々の勘定として扱うことはできず、同じ区分の中で合算されます。運用の設計では本数を分けるのに、帳面では一本にまとまる。分散という言葉が指す範囲は、税の場面では変わるということです。
年内に控えておくこと
- 年間の損益を一本で出す:稼働させたストラテジーや口座が複数でも、同じ区分に入る損益は合算して見る。
- 支払った利用料の記録を残す:金額と支払時期を、公式の表記のまま控えておく。
- 店頭と取引所を分けずに集計する:課税関係は同じと明記されているため、集計を分ける必要はない。
- 引ききれない損失があるかを確かめる:あるなら、繰越の要件と手続をNo.1523で確認する。
- 最終確認は人に聞く:適用の可否と申告書の書き方は、所轄の税務署または税理士に確認する。
よくある質問(FAQ)
- Q. FXの利益はどの所得区分になりますか?
- 国税庁のタックスアンサーNo.1521では、差金決済による差益が生じた場合、他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税されます(申告分離課税)と説明されています。平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則として、その年分の基準所得税額の2.1パーセント)を併せて申告・納付することになるとされています。
- Q. 店頭FXと取引所FXで課税関係は変わりますか?
- 変わりません。同ページには、外国為替証拠金取引には店頭デリバティブ取引と市場デリバティブ取引がありますが、いずれの場合も課税関係は同じですと記載されています。
- Q. FXの損失は他の所得と相殺できますか?
- 同ページによると、他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算は可能ですが、「先物取引に係る雑所得等」以外の所得の金額との損益通算はできません。損益通算をしてもなお引ききれない損失の金額は、一定の要件の下、翌年以後3年内の各年分の「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除することができるとされています。
- Q. 繰越控除を受けるには何が必要ですか?
- 国税庁は繰越控除について「一定の要件の下」と説明しており、要件と手続の詳細はタックスアンサーNo.1523に案内されています。確定申告書の提出を含む複数の手続が定められているため、当記事では抜き書きをせず原典への案内にとどめます。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
- 国税庁 タックスアンサー No.1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」(令和7年4月1日現在法令等/2026年8月28日確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1523「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」(2026年8月28日確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1523.htm
- フジトミ証券「シストレセレクト365」(2026年8月28日確認):https://www.fujitomi.co.jp/systra/
- フジトミ証券「手数料とサービス利用料金」(2026年8月28日確認):https://www.fujitomi.co.jp/systra/service/fee/