INVESTMENT COMPASS / 投資のコンパス
公的なドル円レートは誰が決める?月1回の基準相場
この記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の通貨・取引手法・FX会社の口座開設を勧誘するものではありません。外国為替証拠金取引は元本が保証された取引ではなく、為替相場の変動により預けた証拠金を上回る損失が生じることがあります。制度・数値・取引条件は変更されることがあり、本文の数値は2026年9月11日時点で各機関の公式資料に掲載されていたものです。取引の前に必ず各社の契約締結前交付書面と公式の最新情報をご確認のうえ、ご自身の責任で判断してください。
結論から言うと、日本には「1米ドル=163円」と1円単位で書かれた公的なドル円レートが存在します。財務大臣が公示し、日本銀行国際局が公表する基準外国為替相場です。令和8年9月中に適用される値が163円で、公示されたのは2026年8月20日。取引画面のレートとは別物で、1か月ずっと動きません。草原で言えば、日々の草の伸び方とは別に、部族が季節ごとに打ち直す境界の杭のようなもの。杭は毎日は動かないが、無いと話がまとまらない。数字を並べて、この杭がどう打たれているのかを確かめます。
今月の公的なドル円レートはいくらか?
令和8年9月中において適用される基準外国為替相場は、1米ドルにつき163円です。公示したのは財務大臣で、公表は日本銀行国際局。掲載日は2026年8月20日でした。つまり9月に入る前、8月のうちに翌月分が決まっています。
同時に裁定外国為替相場も出ます。1ユーロ=186円、1スターリング・ポンド=218円、1カナダ・ドル=116円、1スイス・フラン=201円、1中国元=24円、1スウェーデン・クローネ=17円。この6通貨が表に並ぶ顔ぶれです。
気づく点が1つ。どれも1円単位で、小数がありません。中国元は24円、スウェーデン・クローネは17円。市場実勢で見れば小数点以下が当然ついている通貨が、まるめられて整数で置かれています。
この相場は市場レートと何が違うのか?
更新の頻度が違います。市場のドル円は秒単位で動きますが、基準外国為替相場は月に1度しか変わりません。9月中はずっと163円のまま、という前提で運用される数字です。加えて刻みも違う。市場レートは銭単位で提示されますが、こちらは円単位です。
元になる時期もずれています。表の末尾にある「その他の通貨」の定義がそれを示しています。
令和8年7月中の当該通貨のアメリカ合衆国通貨に対する市場実勢を基準外国為替相場をもって裁定した相場
日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場(令和8年9月中において適用)」より
9月に使う数字の根拠が、7月中の実勢だと書いてあります。2か月前です。8月20日に公示されて9月に適用されるのですから、素材は7月のものになる。この相場を「今のレート」だと読むと、2か月ぶんの時差を見落とします。
2026年はどのように動いてきたのか?
1月分から順に並べてみます。単位はすべて1米ドルあたりの円で、公示日は適用月の前月です。
| 適用される月 | 公示日(掲載日) | 米ドル | ユーロ |
|---|---|---|---|
| 令和8年1月中 | 2025年12月19日 | 155 | 180 |
| 令和8年2月中 | 2026年1月20日 | 156 | 183 |
| 令和8年3月中 | 2026年2月20日 | 157 | 184 |
| 令和8年4月中 | 2026年3月19日 | 155 | 183 |
| 令和8年5月中 | 2026年4月20日 | 159 | 184 |
| 令和8年6月中 | 2026年5月20日 | 159 | 186 |
| 令和8年7月中 | 2026年6月19日 | 158 | 185 |
| 令和8年8月中 | 2026年7月17日 | 161 | 185 |
| 令和8年9月中 | 2026年8月20日 | 163 | 186 |
9か月で155円から163円まで、幅は8円でした。月ごとの変化は1円か2円、4月中のように前月から2円下がった回もあります。階段のような動き方をするのが、この数字の特徴です。市場のチャートのようになめらかには動きません。
ユーロのほうはもっと平らでした。180円から186円で、6円の幅。3月中と4月中は184円と183円で、ほぼ横ばいの時期が続きます。
ここで比率を足しておきます。155円から163円は5.2%の上昇です。この計算値は当ブログが表の両端から求めたもので、公表資料が掲げている数字ではありません。
表に載っていない通貨はどうなるのか?
米ドルとの市場実勢から逆算します。公表資料の参考欄には、令和8年7月中における各通貨の対米ドル相場が載っています。1オーストラリア・ドルにつき0.697米ドル、1シンガポール・ドルにつき0.775米ドル、1インド・ルピーにつき0.0104米ドル。韓国ウォンは100ウォンにつき0.0672米ドルという形で示されます。
単位の置き方に癖があります。値の小さい通貨は100単位でまとめられている。1アルゼンチン・ペソにつき0.000673米ドル、1イラン・リアルにつき0.000000730米ドルのように、小数点以下が長く続く通貨もそのまま並びます。
豪ドルを例に計算すると、0.697米ドル×163円で113.6円。この掛け算が「裁定」の中身です。表に6通貨しか載っていなくても、参考欄と基準相場を掛ければ他の通貨も出せる構造になっています。なお113.6円は当ブログの計算値です。
もう一段の入れ子もあります。米ドルに対する市場実勢が得られない通貨は、裁定外国為替相場のある通貨に対する市場実勢を、その裁定相場で裁定した相場を使うと定められています。ドルを経由できない通貨は、ユーロやポンドを経由する、という設計です。
個人の取引にはどう関わってくるのか?
正直に書くと、FXの損益計算に直接この数字を当てるわけではありません。店頭FXの約定はその時々の市場レートで行われ、口座の残高もそちらで動きます。基準外国為替相場は、日々の売買のためにある数字ではないからです。
それでも見る価値はあります。理由は3つ。
- 公的な「まるめ」の考え方に触れられる。1円単位で足りる場面があると知ると、銭単位の変動にどこまで意味があるかを考え直せます。
- 時差のある数字の読み方が身につく。9月に使う値の素材は7月中の実勢。公表日と適用日と素材の時期は、それぞれ別物です。
- 通貨の序列が一覧で見える。裁定相場に載る6通貨と、参考欄に並ぶ通貨の差は、実務での登場頻度の差でもあります。
レートの提示のされ方そのものについては、どの通貨ペアを選ぶかのほうで通貨ごとの性格を並べています。市場の取引高の内訳は東京市場で最も多いのはドル円の売買ではないに置きました。
数字を見るとき、何に気をつければいいか?
- 公示日と適用月を分ける:2026年8月20日に公示、令和8年9月中に適用。日付が2つあります。
- 素材の時期を確認する:その他の通貨は令和8年7月中の実勢が根拠。適用月より2か月前です。
- 単位のまとめ方を見る:韓国ウォンは100ウォンあたり、インドネシア・ルピアも100ルピアあたりで表示されます。
- 市場レートと混ぜない:163円は取引レートではありません。約定に使う数字ではない。
- 最新月のページで確認する:一覧ページから当月分を開く。過去の月のページは残っています。
よくある質問(FAQ)
- Q. 基準外国為替相場は誰が決めていますか?
- 財務大臣が公示し、日本銀行国際局が公表しています。令和8年9月中において適用される基準外国為替相場は1米ドルにつき163円で、掲載日は2026年8月20日でした。
- Q. 裁定外国為替相場にはどの通貨が載っていますか?
- 令和8年9月中の分では、1ユーロ=186円、1スターリング・ポンド=218円、1カナダ・ドル=116円、1スイス・フラン=201円、1中国元=24円、1スウェーデン・クローネ=17円の6通貨です。いずれも1円単位で示されます。
- Q. 表に無い通貨のレートはどう決まりますか?
- 令和8年7月中の当該通貨の対米ドル市場実勢を、基準外国為替相場で裁定した相場を使います。米ドルに対する市場実勢が得られない通貨は、裁定外国為替相場のある通貨に対する市場実勢をその裁定相場で裁定します。
- Q. 市場のドル円レートと何が違いますか?
- 更新の頻度と刻みが違います。基準外国為替相場は月1回の更新で1円単位、適用月のあいだは変わりません。市場レートは秒単位で動き、銭単位で提示されます。約定に使われるのは市場レートのほうです。
- Q. 2026年のドル円の基準相場はどう推移しましたか?
- 令和8年1月中が155円、以降156円、157円、155円、159円、159円、158円、161円、9月中が163円でした。9か月の幅は8円です。
- 日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場(令和8年9月中において適用)」財務大臣公示・2026年8月20日(2026年9月11日確認):https://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/kiju2609.htm
- 日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場一覧」(2026年各月分の掲載日と適用月/2026年9月11日確認):https://www.boj.or.jp/about/services/tame/tame_rate/kijun/index.htm
※155円から163円への5.2%、および豪ドルの113.6円は、公表資料の数値を当ブログが計算して求めた値です。公表資料が掲げている数字ではありません。