INVESTMENT COMPASS / 投資のコンパス
くりっく365と店頭FXは何が違う?取引所取引の清算のしくみ|2026年8月版
この記事は情報提供を目的とした解説であり、特定の取引所商品やFX会社の口座開設を勧誘するものではありません。外国為替証拠金取引は元本が保証された取引ではなく、為替相場の変動により預けた証拠金を上回る損失が生じることがあります。制度・数値・取引条件は変更されることがあり、本文の数値は2026年8月時点で各機関の公式ページに掲載されていたものです。取引の前に必ず各社の契約締結前交付書面と公式の最新情報をご確認のうえ、ご自身の責任で判断してください。
結論から言うと、くりっく365と店頭FXを分けているのは、スプレッドでも手数料でもなく、取引の後始末を誰がやるかです。くりっく365では東京金融取引所が金融商品取引清算機関として清算を担い、証拠金も全額そこへ預けられます。店頭FXでは、店頭FX会社が提示した価格で取引が行われ、証拠金は信託銀行等への金銭信託で区分管理されます。草原で言えば、村の共同の井戸から水を汲むのか、自分のテントの前に掘った井戸から汲むのかという違いに近い。どちらが上等かという話ではなく、水が枯れたときに誰が責任を持つのかが変わります。この記事では、両者の構造の差を公式に書かれている文だけでたどります。
くりっく365とは何を指すのか?
くりっく365とは、東京金融取引所が2005年7月に上場した取引所為替証拠金取引の愛称です。商品の正式名称ではなく、愛称。公式ホームページの説明はこうなっています。
「くりっく365」は、2005年7月に本邦初の公的な取引所FXとして、東京金融取引所が上場した取引所為替証拠金取引の愛称です。
同じページには、FX取引を規制する改正金融先物取引法が2005(平成17)年7月に施行され、それと時を同じくして上場されたという経緯も書かれています。制度が先にあって商品が乗った、という順番です。なお公式が示している粒度は「2005年7月」まででした。何日に始まったかは公式ページに書かれていないため、この記事でも日付までは書きません。
大口向けの区分もあります。くりっく365ラージは、スプレッドを重視する投資家及び法人等の大口投資家向けとして2015年11月に上場したものです。規模については、口座数120万口座、証拠金預託額5,300億円を突破したと公式が記しており、この数字の基準時点は2024年12月末現在。2013年からの手数料無料化が背景にあると同ページは説明しています。
| 項目 | 公式に書かれている内容 |
|---|---|
| 上場 | 2005年7月/東京金融取引所。くりっく365ラージは2015年11月 |
| 決済方法 | 差金決済 |
| スワップポイント | 売り・買いの区別なく1本値 |
| 取引単位 | 1万通貨単位と10万通貨単位(ラージが10万通貨単位) |
| 休業日 | 土曜日、日曜日、1月1日(1月1日が日曜日の場合は1月2日)。臨時に全部または一部通貨につき休業日を定める場合もある |
取扱通貨ペアについて一点、注意があります。公式ページは通貨ペアを列挙しているだけで、合計いくつなのかを数字で書いていません。当記事で一覧を数えたところ、対円通貨取引とクロスカレンシー取引を合わせてラージ込みで33、ラージを除いて28になりました。これは当記事の集計値であって、公式が発表した数字ではありません。他所で見かけた通貨ペア数も、たいていは誰かが数えた数です。
取引時間にも注意が要ります。付合せ時間帯は曜日ごとに区切られ、休業日も定められており、終日いつでも動いている市場ではありません。具体的な時刻は臨時に変更される場合があると公式が注記しているため、ここには書きません。取引の前に商品仕様のページでご確認ください。
誰が取引の相手方になるのか?
くりっく365では、東京金融取引所が金融商品取引法に基づき承認を受けた金融商品取引清算機関として、上場商品すべての清算を担っています。取引所の役割は、場を貸すことだけではありません。約定したあとの後始末まで引き受けるのが取引所です。
東京金融取引所(以下、「TFX」という)は、金融商品取引法に基づき承認を受けた金融商品取引清算機関として、TFXに上場された商品の全てについて、清算業務を行っています。
毎日どう回っているのかも公式に書かれています。毎取引日、付け合せ終了時点でTFXが商品毎に決定する清算価格に基づき、投資家毎に為替差金が算出され、それが証拠金所要額に反映される。ここで証拠金に不足が生じた場合、投資家は清算参加者が定める時限までに、その不足額以上の金額を取引参加者に追加預託する必要があります。決済されずに残った建玉は翌取引日に引き継がれます。これがロールオーバーです。
同じ枠組みは法令の側にも書かれています。金融商品取引法第119条第1項は、金融商品取引所が市場デリバティブ取引について取引証拠金の預託を受けなければならないと定め、同条第4項は、預託を受けた取引証拠金を内閣府令で定めるところにより管理しなければならないと定めています。取引所が清算に関与するのは商慣行ではなく、条文上の義務です。
店頭FXとは構造がどう違うのか?
店頭FXの取引価格は、店頭FX会社が提示した価格です。くりっく365では、複数の金融機関から受けた価格を合成した1本の価格が提示されます。価格の作られ方が、まず違います。
「くりっく365」は、外国為替市場における複数の主要金融機関(マーケットメイカー)から価格の提供を受け、この中から、その時点において投資家に最も有利になる価格をシステムで自動的に合成し、そのままの価格を取引参加者を通じて投資家の皆様に提示しています(※1)。
ただし、この一文には公式自身が注記を付けています。レートを提示するマーケットメイカーの数は通貨ペアによって異なり、全てのマーケットメイカーが全上場通貨ペアにレートを提示するわけではありません。「取引所だから常に複数社の競争にさらされた価格が出る」と読み替えると、公式が付けた限定を落とすことになります。マイナー通貨ペアでどれだけの社が価格を出しているかは、この記載からは分かりません。
もうひとつ、書けないことを先に書いておきます。「店頭FXでは注文の相手方がFX会社そのものだ」という説明をよく見かけますが、私が今回たどれた公的な一次情報の範囲では、その形で明言した記述に行き当たりませんでした。日本投資者保護基金のQ&Aには、店頭デリバティブ取引とは取引所という市場に注文を出すことなく、お客さまと証券会社の間で相対で行う取引だと書かれています。ただしこれは証券会社を主語にした店頭デリバティブ一般の定義であって、店頭FX業者を名指ししたものではありません。そこでこの記事は、相手方が誰かではなく、取引所が清算に関与するかどうかの側から両者を分けています。
| 見る箇所 | くりっく365 | 店頭FX |
|---|---|---|
| 価格の出どころ | 複数のマーケットメイカーから提供された価格を自動合成して提示(提示社数は通貨ペアにより異なる) | 店頭FX会社により提示された価格 |
| 清算 | 東京金融取引所が金融商品取引清算機関として上場商品の全てについて清算業務を行う | 取引所に注文を出さずに行う店頭(相対)の取引 |
| 証拠金の保管 | 取引参加者が全額を東京金融取引所に預託。TFXがID単位で残高等を管理 | 証拠金を預けた取引会社によって区分管理される |
| 投資者保護基金 | 補償対象ではない | 補償対象ではない |
預けた証拠金はどこにあるのか?
くりっく365では、取引参加者は法令により、投資家から預かった証拠金の全額を東京金融取引所へ預託することが義務付けられています。公式ホームページの表記は次のとおりです。限定句ごと引きます。
預託された証拠金は全額東京金融取引所が保管しており、 取引参加者が万一破綻したような場合 でも、皆様の証拠金は原則として、 保全される仕組み になっています。
ここで落としてはならないのが「原則として」の四文字です。公式サイト自身がこの限定を置いています。例外なく守られる、と書き換えた瞬間に出典と食い違うのです。私はこの手の限定句を、草原の古老が話の最後に必ず付ける「よほどの吹雪でなければ」という一句と同じものだと思っています。付けている本人がいちばん、例外を知っている。
保管の実務も公開されています。TFXは証拠金の分別管理制度を導入しており、取引参加者が投資家の証拠金をTFXに預託し、TFXが取引参加者によって各投資家に付与されたID単位で残高等を管理する形です。もう一点、見落としやすい仕様があります。くりっく365の証拠金は全て円現金であり、代用有価証券による預託はできません。
店頭FX側はどうか。こちらは業者が信託銀行等への金銭信託で区分管理します。金融先物取引業協会の説明によれば、2007年夏以降にFX業者の破綻が複数あり、区分管理が適切に行われず顧客に証拠金を返還できない事例がみられたことを踏まえて内閣府令が改正されました。府令の施行は2009年8月1日、既存業者への適用開始は2010年2月1日です。この二つの日付は別物なので、混ぜないでください。
なお、いくら預ければ何枚建てられるのかという証拠金の額の決まり方は、個人と法人で計算方法そのものが別です。個人は必要証拠金率4%(レバレッジ倍率25倍)と商品毎の過去5取引日の平均価格から算定され、取引参加者および非個人顧客は統計的手法で算定されます。どちらも原則として週次で見直されます。この論点はレバレッジ25倍は全通貨で同じ?個人4%固定と法人の週次見直しで分けて書いています。
万一のとき、投資者保護基金は使えるのか?
くりっく365は、日本投資者保護基金の補償対象ではありません。対象なのは、名前のよく似たくりっく株365のほうです。ここがいちばん取り違えやすい箇所なので、両方の逐語を並べます。
まず、補償を受けることができない取引の列挙に並んでいるものです。
取引所の通貨関連取引(東京金融取引所の「くりっく365取引」など)
外国為替証拠金取引(FX取引)
次に、補償対象となる取引の列挙の側です。
国内取引所の株価指数証拠金取引に係る証拠金
(例) 東京金融取引所の「くりっく株365取引」に係る証拠金又は証拠金代用有価証券
通貨を扱うくりっく365は対象外で、株価指数を扱うくりっく株365は対象。一文字違いで答えが逆になります。証拠金の中身も逆で、くりっく365は円現金のみ、くりっく株365のほうは基金の記載に証拠金代用有価証券が併記されています。
店頭FXも同じく対象外です。基金のQ&Aには、信託受益権、組合契約などの第二種金融商品取引業に係る取引やFX取引については補償対象ではないと明記されています。法令の側でも、金融商品取引法第79条の20第3項第3号が顧客資産の定義から店頭デリバティブ取引を括弧書きで除いています。つまり店頭FXでも取引所FXでも、この基金は効きません。
補償上限として知られる1,000万円にも、二つの限定が付いています。ひとつは、破綻した証券会社が分別管理の義務に違反したことによって返還を受けられなかった金銭・有価証券が対象だということ。破綻すれば自動的に1,000万円が出る制度ではありません。もうひとつは、この上限が破綻した証券会社ごとにお一人あたり合計1,000万円だということ。複数社が同時に破綻した場合も同様と書かれています。いずれにせよ、FX取引はその手前で対象から外れています。
どちらを選ぶかの判断軸は何か?
判断軸は有利か不利かではなく、価格が誰の手で作られ、証拠金を誰が保管し、破綻時にどの仕組みが効くかという三点の構造差です。私はどちらかを勧める立場を取りません。取れる材料が構造の違いまでで、優劣を決める材料ではないからです。
税金の扱いは、どちらでも変わりません。国税庁のタックスアンサーNo.1521は、外国為替証拠金取引には店頭デリバティブ取引と市場デリバティブ取引があるものの、いずれの場合も課税関係は同じだと説明しています。
口座を選ぶ前に確認する順番
- 証拠金の預け先を確認する:くりっく365は東京金融取引所へ全額預託。店頭FXは業者が信託銀行等への金銭信託で区分管理。
- 公式が付けている限定句を読む:「原則として、保全される仕組み」の原則としてを飛ばさない。
- 補償制度の対象範囲を見る:日本投資者保護基金はFX取引を補償しない。くりっく株365と混同しない。
- 取引時間と休業日を商品仕様で確認する:臨時に変更される場合があると注記されている。
- 必要な証拠金額を取引会社側で確認する:取引所が定める証拠金基準額に、取引参加者が任意証拠金を上乗せする設計になっている。実額は会社によって変わる。
口座そのものの選び方はFX口座はどう選ぶ?草原の渡部が教える「自分に合う一頭」の見つけ方に、これから最初の一歩を踏み出す方ははじめてのFX口座開設にも道順を置いています。
よくある質問(FAQ)
- Q. くりっく365は投資者保護基金の補償対象ですか?
- 対象ではありません。日本投資者保護基金のQ&Aは、補償を受けることができない取引として東京金融取引所の「くりっく365取引」を挙げています。一方で補償対象となる取引の側には、国内取引所の株価指数証拠金取引の例として「くりっく株365取引」に係る証拠金又は証拠金代用有価証券が挙げられています。名前は一字違いですが、扱いは逆です。
- Q. くりっく365の証拠金は誰が保管していますか?
- 東京金融取引所です。取引参加者は法令により、投資家から預かった証拠金の全額を東京金融取引所に預託することが義務付けられており、預託された証拠金は全額東京金融取引所が保管していると公式ホームページに書かれています。取引参加者が万一破綻したような場合でも証拠金は原則として保全される仕組みである、という表記です。原則として、という限定が公式側に付いています。
- Q. くりっく365は24時間取引できますか?
- 終日ではありません。東京金融取引所の商品仕様では、付合せ時間帯が曜日ごとに区切られており、休業日として土曜日、日曜日、1月1日(1月1日が日曜日の場合は1月2日)が定められています。臨時に全部または一部の通貨につき休業日を定める場合もあると注記されています。
- Q. 税金の扱いは店頭FXと違いますか?
- 同じです。国税庁のタックスアンサーNo.1521は、外国為替証拠金取引には店頭デリバティブ取引と市場デリバティブ取引があるが、いずれの場合も課税関係は同じであると説明しています。個別の申告については税務署または税理士にご確認ください。
- くりっく365公式ホームページ「くりっく365とは?」(2026年8月29日確認):https://www.click365.jp/about_fx/
- くりっく365公式ホームページ「特徴とメリット」(価格提示・証拠金の保全/2026年8月29日確認):https://www.click365.jp/about_fx/about_fx04.html
- 東京金融取引所「取引所為替証拠金取引 くりっく365」商品仕様(2026年8月29日確認):https://www.tfx.co.jp/retail/click365.html
- 東京金融取引所「個人のお客様(投資家)向け清算決済業務」(2026年8月29日確認):https://www.tfx.co.jp/retail/clearing.html
- 日本投資者保護基金「よくあるご質問」(補償対象・補償上限/2026年8月29日確認):https://jipf.or.jp/qa/
- 金融先物取引業協会「FX取引の信託保全について」(2026年8月29日確認):https://www.ffaj.or.jp/regulation/trust/
- 国税庁 タックスアンサー No.1521「外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」(2026年8月29日確認):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1521.htm
- 金融商品取引法(第79条の20、第119条/e-Gov法令検索・2026年8月29日確認):https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025